2007年外国人による日本語弁論大会 発表原稿
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「大事なコミュニケーション」

キム アラム
韓国


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 はじめまして。私は韓国の圓光大学校から交換留学生として来たキム・アラムです。
私は日本人に会うと常にこう聞きます。「あの・・テレビで見たんですけど、なぜ学生が先生にため口(友達ことば)で話すのですか?」と。
皆さん、考えてみてください。学生が先生にため口で話す事に対してどう思われますか。私は日本に来て初めてテレビを見た時の衝撃を覚えています。それは「中学生日記」という番組だったのですが、主人公の女の子のセリフでした。「先生の夢は何?」びっくりしました。その後、佛教大学でも先生にため口で話す学生達をよく見かけたのです。
私の国では、先生にため口で話すことなんて絶対あり得ません。しかも私は将来、日本語の先生になるために現在、ここにいます。先生になった自分が学生たちにため口を言われたら、本当に残念に思うのではないでしょうか。先生を夢見ている私としてはやはり、変だと考えざるを得なかったのです。
私は今年の夏休みに、北海道へホームステイに行ってきました。美しい景色、おいしい食べ物、2週間の間、決して忘れられない思い出をいっぱい作って帰ってきました。
そんな思い出の中で一つだけ違和感を感じたことがありました。それは私がお世話になっているホームステイの家でバーベキューをした時のことです。ホームステイのお父さんとお母さんのお友達と、そのお子さんたちが家に来たときでした。お父さんと子供たちが遊んでいました。その時にまた衝撃を受けました。
その家のお父さんのお名前はスマルです。子供たちはお父さんに向かって「マルちゃん!ジュースちょうだい!」と言いました。するとお父さんは 「だめだ〜これはマルのものだからだめ〜」と言ったのです。大人であるお父さんが自分のことを子供たちと同じレベルにすることによって、子供たちも平気でため口を使ったり、お父さんのことをばかにするかのようにも見えました。
私はお父さんに聞いてみました。「学生が先生にため口で話すことに対してどう思いますか?」。お父さんは「子供たちと親しみを築くためには、そうするんじゃない?」
と答えました。しかし、私には理解できませんでした!なぜ子供たちが大人にため口で話すのでしょうか!どうして、大人と子供が、または先生と学生が親しくなるためにはため口で話さなければならないのでしょうか!ずっと悩んできました。
これとは少し違う話ですが、私は春学期にサークルでやっと親しくなった3年生の先輩にずっと敬語を使ってきました。その先輩は敬語で話さなくてもいいと言いましたが、やはり3年生の先輩であるし、敬語を使ったほうが日本語の勉強にも役に立つから、敬語を使うことにしました。韓国の後輩たちは私に敬語を使っています。自分の方が年上だし、1年生は後輩だから敬語を使うのは当然のことだと思っています。ですが、今、あの3年生の先輩とは、だんだん話しをしなくなりました。他の1年生の後輩たちとは親しくなっているのに、私とはいまだに気まずい仲なのです。
その時、私はふと思い出しました。そんなに敬語を使っている自分が同じ寮に住んでいる二つ上の日本人のカナちゃんにはため口で話しているのです。一つ上の韓国のおねえさんたちには、なお韓国語で「です」とか「ます」とか敬語を使っていますが、どうしてカナちゃんにはため口で話しているのでしょうか。
考えてみると、カナちゃんだけではなく、春学期の学習支援者はみんな私より年上だったのにもかかわらず、ため口で話しています。なぜ韓国語では敬語を使いながら、日本語ではため口をし、サークルでは敬語を使いながら、カナちゃんにはため口で平気で話すのでしょう。この矛盾に気が付きました。それは日本語が韓国語とは違うからです。
7ヶ月の日本生活の間、ずっと思い悩んだのは韓国の考え方にこだわっていたからです。私がいるこの場所は韓国ではないから、違うのは当たり前なのに・・・
韓国と日本は近い国でありながらも、こんなに違うところがあるのです。
私はずっとこの違いを認めていなかったのです。いいえ、認めたくなかったのかもしれません。そしてある事実にたどりつきました。私は韓国のことばかり考えて、日本と正面から向き合うのが怖かったのです。「間違ったらどうしよう・・・・・失敗しないように・・気をつけなきゃ・・・・」そう考えているうちに人と心から接することができなくなったのです。日本と正面から向き合うのが怖くて、心を隠し、目の前のことばかり考え、何も見えなくなっていたのです。日本にきて今まで立派な日本語を使うために必死だったのですが、結局振りかえってみると、実際は日本のことを十分に理解していなかったのでした。そればかりではなく、日本では友達を作るのが難しい!と思っている自分自身のことに気づきました。
しかし!日本に来てから7ヶ月、今やっとこの国を理解した気がします。韓国にこだわらなくなって、学生が先生にため口で話す事もホームステイのお父さんが子供たちに自分のことを「マルちゃん」と言った事も、私がまだサークルの友達と気まずくなっている理由も分かる気がします。
さて、再びみなさんにお聞きします。「皆さんは大事なコミュニケーションのためにどのような話し方をしていますか?自分の言いたいことを相手にちゃんと伝えていますか?」。皆さん、大事なコミュニケーションはまず、心から始めましょう。
ご静聴ありがとうございました。


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