2007年外国人による日本語弁論大会 発表原稿 |
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「恐怖に立ち向かう」 |
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シン カ 中国 アルバムは下です。 |
あなたの怖いと思うことやものはなんですか?凶暴なライオン?何がなんだか分からなくなりそうな精密機械?それとも…紫外線?
私が思う一番怖いものは、ライオンでもなく、紫外線でもありません。また、「目力だけで死んだ人を生き返らせるかもね。」と友達に言われた、もと警察の父でもありません。私が一番怖いと思うもの、それは、この日本のニュースです。日本に来てもう5年目になる私ですが、日本のニュースを見ているといまだに恐怖を覚えるのです。 日本で初めて出会ったお刺身も、納豆も、梅干も、お漬物のたくあんも、すぐに食べられるようになり、今では、「たくあん」以外は、私の好きな食べ物の上位争いをしているので、異文化に対する適応力がない、とういうわけではないと思うのですが。 何がそんなに怖いかというと、実は、私の祖国である中国で報道されているニュースはそのほとんどが華々しい喜びの内容を伝えるニュースなのです。ですが、日本のニュースの大半は、殺人や、事故など眉を顰めるようなニュースばかりです。 留学生活は正直に言って楽ではありません。ホームシックに耐えながら、学校の勉強とアルバイトを両立し、くたくたになったとき、ふとつけたテレビから、次々と悲報が流されると、祖国にいるときの感覚で喜びや楽しいニュースが流れて当たり前だと思っている私は、思わずゾクッとしてしまうのです。 日本に来たばかりの時、日本のニュースに脅かされ思わずお母さんにSOSの電話をしたことがあります。 「お母さん、日本は危ないよ。いつ何があるか分からない、どうしよう。」 するとお母さんは、 「日本は一番安全な国だよ。今忙しいから申花の冗談には付き合ってられないの、ごめんね。」 ガチャン、ピーピー。 「オカァサンー、…」 そのときはちょっと待って!ちゃんと話を聞いて!と、すごくショックを受けましたが、しばらく考えてみると、その一言が私の考え方を変えるヒントになりました。 それは、どうして異国の地にいる娘からのSOSが冗談にしか聞こえないほど、日本の安全は信頼されているのかということです。 思えば確かに安全なのですが、その安全の理由の一つがこのニュースにあるのではないかと思いました。 例えば、今耐震偽装問題がよく取り上げられていますが、これは単に人間の汚い嫌な部分を取り上げたニュース、で終わりではなく、地震が多い日本家屋はもともと高い安全性を持っていたけれども、阪神大震災ではそれでも大きな被害が出たので、規制を厳しくし、不正を許さず安全を追求している証だったのです。阪神大震災のような、悲惨な出来事にも、目を背けず、立ち向かう、また、他の殺人や、政治家や役人の不正や汚職といったニュースでも、怖いから、見ると気分が悪くなるから、また誰かに都合が悪いから報道しない、というのではなく、きちんと起こったことをみんなに伝えて、何故そんな悲惨な、または悪質な事件が起こったのか、次どうすれば起こらないようにできるのかと、実は日本の「怖いニュース」は、自らを戒め恐怖に立ち向かっているというメッセージだったことに気付いたのです。このような前向きな姿勢や責任感が他の国々の評価につながり、信頼に結び付いているのだと思います。 私は日本に来て、大学での勉強はもちろん、文化や礼儀作法などたくさんのことを学びました。その中で、恐怖に立ち向かい次のステップに登る勇気を教えてくれた「怖いニュース」に(今でもやはり悲惨なニュースは苦手ですが)感謝しています。 また、私は京都教育大学で日本言語文化を専攻しているのですが、将来先生になったら私の授業を受講している学生達にこの話をしたいと思います。そこで聞いている学生達が恐怖や困難なことがあっても挫けず、立ち向かい努力する、その手助けになることを心から祈っています。 |
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