2005年外国人による日本語弁論大会 発表原稿
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留学はギャンブル
ジョ イ
中国

 私は日本に留学する前に、とても単純な計算をしました。
日本の大学に留学すれば、アルバイトをしながら、勉強もできる。
ということは経済的に独立できて、学歴も手に入れることができる。
それに、外国では頼れる人もいないから、自立精神もきっと鍛えられるだろうと思いました。
こう計算してみると、自分の国で親のお金で大学に行く学生たちの3 倍のものが得られることになります。
留学ほど得をすることはないと。
そして、東大を目指して頑張ろうと決心し、自信満々で留学の道に踏み出しました。
 しかし、日本に来て初めて、現実は全く違うことに気づきました。
まず、直面したのは言葉の壁です。
周りがみんな日本人でも、言葉というものはそう簡単には身につきません。
日本語がわからないので、テレビを見ても面白くないし、誰かに話しかけることも出来ませんでした。
せっかく学校からボランティア・チューターを紹介していただいたのに、なんにも話せなかったので、二度と会ってもらえませんでした。
 そして言葉ができないということは、アルバイトもできないということでした。
ですから、次には経済的な壁に直面することになりました。
いくら体力があるからといっても、日本語も話せない外国人を雇ってくれるところはありませんでした。
 日本語の勉強が進み、日本社会にも慣れ、アルバイトも見つかって、生活も安定しましたが、その頃、私にとって非常に危険なことが訪れました。
お金の誘惑です。
日本に来てから4 ヶ月後、アルバイトを始め、1 ヶ月8 万円程度の収入がありました。
高校しか卒業していない私にとって、かなりの金額でした。
家賃や生活費以外にも外食したり、中国では買えないブランドものの洋服や電化製品を買ったりして、ついつい満足してしまいました。
だんだん勉強にやる気をなくし、アルバイトに嵌りました。
アルバイト先の社長に入社しないかと誘われ、進学をあきらめそうにもなりました。

 私の周りの留学生たちはどうなのでしょうか。
留学生の年齢はどんどん低下しています。
内モンゴルの女の子たちが日本の女子校に留学しています。
ある女の子から聞いた話は一生忘れられません。

「私1 5 才で日本に来て、ここで三つの1 8 歳を過ごしたの。アルバイトしないといけないけど、年齢が足りないから雇ってくれないの。それで、いつも自分は1 8 歳だと騙してた」。

 また、長春から来た男の子はこう言いました。
「日本の高校に入って最初はちゃんと授業に出ていたけど、だんだん学校をサボるようになった。毎日中国人の仲間たちと夜中まで遊んで、昼間は寮でひたすら寝てる。あっという間に三年過ぎて、いまどの大学もいけそうもない。どうしよう」。

 それでも、現状を知らない親たちは、子供に出世してほしいという思いで大金を賭けて子供たちを海外に送りだしています。
しかし、留学というものは高いリスクを伴います。
ギャンブルのようなものです。
日本で生活しているうちに、お金の誘惑に負け、自分を見失って、犯罪に走る人もいます。
しかし、子供たちがどうすごしているのかは親たちには知りようもない状態です。
いまの留学生の現状を考えると、もっと留学生を支援するシステムが必要だと思えてなりません。
 私自身の話に戻りますが、アルバイト先への入社のことを両親に相談して、ひどく叱られました。
何のために日本に行ったの?原点に戻って考えてみろと。
その言葉で、幸運なことに、見失いそうな自分を見つける事ができました。
学校の先生方もずっと私を支えてくださいました。
おかげで京都大学に入学できて、充実した毎日を過ごしています。
でも、私みたいな幸運児はそれほどいません。
ですから、私は、少しでも留学生の置かれた現状を改善するために、大学卒業後、留学生支援のための組織を作ろうと思っています。
それが私を支えてくださる方々への恩返しにもなるとも思います。
 その組織は日本と中国の交流や貿易を目指す留学生を支援、育成することを目的とするものです。
そして、少しでも留学に伴うリスクを減らし、安全、安心、満足のできる留学環境を作ることを目指します。
留学予備校、進学コンサルティング部、日本留学試験対策部、大学受験部、就職支援部などの部門を作り、一貫した支援体制を作りたいと思っています。

そのために、これから、多くの在日留学生に呼びかけ、同じ志を持つ仲間を探していこうと思っています。
 今私はインターネットの日本留学掲示板で管理者をしています。
日本全国の多くの留学生受験生を応援しています。
受験対策から進学の悩みまでさまざまな相談を受けています。
一人でも多くの人が留学ギャンブルから抜け出して、自信を持って留学生活を送れるよう願っております。



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