2004年外国人による日本語弁論大会 発表原稿
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「日本はない」
ジョ ジェミョン
 みなさん、この本をご存知でしょうか?(本を持ち上げながら)

これは「日本はない」という本です。
「日本はない」というタイトルだけでみなさんはその内容が予想できるでしょう。
そうです。この本はある韓国のジャーナリストが日本での体験に基づいて日本という国を否定的な立場から述べたものです。そこには「本音と建前」「いじめ」「乱れた性文化」など正に日本をつまらない国と定義し、そのジャーナリストの興奮したメッセージが書かれています。

10年以上私の手元にあったこの本を私は小学生の時読みました。
日本という国にこの本で初めて接し、書かれているすべてを信じたと言っても過言ではありません。
当時、幼い子供だった私にとって、この本は日本という国に対する偏見を持たせることには十分でした。

例としてこの本に書かれている文書を少し読み上げたいと思います。
「世界で雄一、本音と建前という言葉が存在する程、二重人格者が一般の人であり、またそれが礼儀正しい人になるためのことである、と思う変な国が日本だ。」皆さんはこの文書をどう思いますか?私は実際、このような文書を読んで日本という国のイメージを頭の中で作ってきたわけです。

しかし、1年前、韓国から日本に来て、私が初めてあった日本人は、京都駅の前で道を尋ねたある男性でした。ホテルを探していた私に、その人は自分の携帯でホテルの場所を聞き、直接連れて案内してくださったのです。
それは日本人に対する私の認識をひっくり返すきっかけになりました。そして、その人との出会いによって私が10年前読んだあの本からようやく脱皮したとも言えるでしょう。

残念ながらその本は韓国の国内ですごくヒットし、ベストセラーになりました。これは私のような、日本に対する固定観念を持ち、一人に過ぎない大げさな意見を鵜呑みにしているかわいそうな人がいるということを意味しているのではないでしょうか。

私が通っている大学には留学生向けの授業の中に日本事情という科目があるのですが、その授業で日本という国をもっと知るということだけでなく、もっと理解するということはどういうことかを学びました。
その授業で最も強く感じたことは、「日本にはさまざまな性格の人がいて韓国人よりもっと韓国人のような日本人もいる、だから日本はこうだ!ときめつけるのは悪い習慣である」ということでした。

同じようなことが、日本以外の国についても言えると思います。
みなさんは、韓国人は毎日キムチを食べて、せっかちな人たちだと思いますか?
確かにそうかも知れません。
しかし、私は日本に来てからキムチを食べることになり、また決してせっかちでもありません。

今日のマスコミはその役割と影響が大きく、みなさんも韓国についてたくさんの情報を得ることができると思います。しかし、それが全て真実だとは私はとっても思えません。
それは、10年間、あの本に騙されたという悔いがあるからです。

情報化時代とも言われる現在、お互いの文化を正しく理解するためには偏見のない情報が必要ではないでしょうか。それは日本と韓国だけのことではありません

ただ、私が留学している日本、文化や歴史的理由などでいろんな感情によってゆがんだ情報が多い日本と韓国の間に、誤解や固定観念を超えた真の交流の始まりの一歩を踏み出すことができればうれしいなと思います。 

ご清聴ありがとうございました。


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