2004年外国人による日本語弁論大会 発表原稿
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「ボランティアに溢れる社会づくりを目指して」
ソウ エイキン
  皆さんはボランティアの手を借りたことがありますか?
またボランティアをしたことはありませんか?
私が日本に来て初めてボランティアに会ったのは、日本語学校ででした。
四年前、日本に来たばかりの時は○×(まる、ばつ)さえ言えませんでした。
そんな私に毎週一回決められた時間に来て、日本語の会話の相手になってくれる一人のボランティアがいました。
一週間に一時間のその時間は、私にとって学校で勉強した文法を、日常会話で活用できる唯一の機会でした。
でも、いつも忙しそうに見える彼女が、なぜ身も知らぬ私に何の報酬もなく付き合ってくれるのか、その時の私には分かりませんでした。
「どうして」という私の質問に、「楽しいから」と言ってくれる彼女を、不思議な人だなと思いました。

大学に入ってからボランティア概論などの、人間文化についての総合的な勉強を始めました。
そして、ボランティアについて少しずつ分かるようになりました。
Volunteerの語源はラテン語で“自由意志”を表す“Voluntas”です。「ボランティア」とは、自発的に自分の意志に基づいて、福祉、平和、自然環境、人権などの問題を主体的に捉え、その解決や支援のために一市民として活動する人、及びその活動、その考え方を表す言葉です。
また、何かをやりたいという自己満足よりも、相手のニーズを優先し、支えあって生きることによって喜びを感じる、自発的な活動なのです。
今になって私は、彼女の楽しさが少しですが、やっと分かるようになりました。
自分の助けを必要とする私を見て彼女は、目の前の人、つまり私の役に立てることに生きがいを感じたのです。
彼女のように、日常生活の中で私たちが少しでも人の役に立ちたいという気持ちで自分の回りを見ていれば、社会は一層明るくなり、輝くはずです。

去年の5月から、私は「京都ISC」(インターナショナル・サービス・センター)というボランティア組織の一員となり、外国人観光客に京都を案内するボランティア活動に参加しています。
だんだん私はボランティア活動を通じて、人の役に立てることの嬉しさを感じるようになりました。
そして、年末には京都ISCから「優秀活動者」に選ばれ、賞状ももらいました。

この間、私は同じ中国からの留学生の友達に、電話でこの話をしました。
そうすると、私の活動が罪を犯して償いをするための行為ではないかと思わぬ誤解をされました。
私は暫くの間呆然とし、自分がしようとしているボランティア活動が、誰にも分かってもらえることではないと思いました。
でも、日本で体験したボランティア活動に対する私の意欲は、少しも薄れていません。むしろその必要性と緊迫性を感じています。

これまでは、日本でもボランティアは特殊な人々がする、特別な活動と見なされていました。

しかし、1995年の阪神淡路大震災における非常に多くのボランティアの活動をきっかけに、ボランティアに対する社会的認知度が一気に上昇しました。

2−2

これまでに考えられていた特殊な人々しかできない行為ではなく、誰もができる普通の手助けとなってきています。私は経済高度成長期を迎え先進国になり、経済的にも精神的にも豊に過ごしている日本人の心を支えていくのが、ボランティアではないかと思います。
昔、日本は中国から文化を取り入れ都を築きましたが、私は中国に比べて、もう動き始めている日本社会のボランティア体制を、中国に逆輸入したいと思います。

1980年代から、中国でもボランティア活動は、社会に貢献する存在として注目され、政府も推進しています。中国では「義工」(yigong)と呼ばれ、社会的関心を集めていますが、中国の人たちはボランティアについてまだあまり理解していません。
ですから、それほど普及していません。
今、毎年国民総生産が7%以上増えていて、経済的に目覚しい発展をしていますが、貧富の差が激しい現状から、一人一人を大切にすることが何よりも大きな、実質的問題となってきています。
物質的な豊かさだけでなく、精神的な豊かさにも目を向けて、国民のボランティア活動に対する理解が広がれば、中国の社会はお互いに助け合う暖かい社会になり、中国の未来はもっと素晴らしくなるのではないでしょうか!

一人一人がボランティア活動をする限り、人々はお互いに支えあい、心豊かに生きていけると思っています。ボランティア活動が盛んになれば、世の中はきっとより住みやすい、居心地の良い場所になると信じています。
今、私達にとって大きな課題となっている共生、つまりともに生きていくことにおいて、ボランティアはなくてはならない存在でもあります。

私は、中国でボランティアの先駆けとして活動している人たちと手を携えて、ボランティアに溢れる中国の社会づくりを目指していきたいと思います。


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