2004年外国人による日本語弁論大会 発表原稿
ビデオはここをクリック

「異文化を尊重できる社会作りへ−日本での経験を生かして」
パトリック ウー
 アロハ!私は同志社大学で勉強しているパトリック・ウーと申します。
 よろしくお願いします。

 同志社大学の創立者である新島襄先生は、1864年、21歳の時に鎖国令を犯して密かに出国しました。その彼が船の中で作られたのは、この漢詩です。
「家を離れて初めて解す天の広きを、海を航して反って知る地の些きを」…今の私と全く同じ心境です。
交換留学生としてハワイから同志社大学に来て、まだ2ヶ月しか経っていないのですが、目から鱗が落ちる経験ばかりで、「世界って広いんだなあ」と改めて感じられました。
今日はこの経験の中からいくつか話しをします。

京都では、時代祭りを見に行ったり、茶道やお琴などを体験したり、色々学んでいます。
この中で一番貴重な経験は、人と人の触れ合いと言えるでしょう。

実は、この間本家という町屋を訪問させて頂きました。
私達留学生とは見知らぬ間柄なのに、家の奥さんが「今日皆さんに会えて本当に嬉しいわ。お茶を入れるから、ゆっくりお寛ぎ下さい」と言って下さいました。
「一期一会」という言葉は前に習ったことがあったのですが、その日初めて本当の意味を知りました。

さて、私の留学生の目的は何かというと、それは日本語の勉強だけではなく、日本の文化や社会についても色々学ぶためです。
これからの一年間、いろんなことを体験し、周りの人々との交流や触れ合いを通じて日本への理解を深めていくのが今の目標です。多くの人と接することで、自分の国の文化も再発見できるでしょう。

私の日本との最初の出会いは高校生の時に体験した日本でのホームステイでした。
当時簡単な挨拶さえできなかった私ですが、ホストファミリーのお陰で、人間同士の暖かみを感じ、心と心の触れ合いが出来ました。
相手の国の言語が喋れなくても、国籍や文化が違っていても、真心を込めて相手と接すれば気持ちが伝わるというのは本当に不思議ですね。

「心と心の触れ合い」それは戦争とテロの頻発する21世紀を生き抜くために必要なものなのではないでしょうか。
私は去年の8月に広島の原爆資料館へ見学に行きました。
音声ガイドで吉永小百合さんが朗読した原爆詞を聞きながら、一瞬にして命を奪われた少女の制服を見ていると、胸を打たれ涙がボロボロ流れました。そして、戦争の悲しみと残酷さを痛感しました。
戦争をしても、何も解決にならない、ただ多くの命を無駄にしてしまうだけです。

国家間や民族間の紛争を解決するためには、相手のことを理解しようとする努力が必要だと思います。
個人レベルで、われわれにできるのは、平和への第一歩として、国際交流の活動に積極的に参加することなのではないでしょうか。

さて、学内の交流活動といえば、私は先月同志社大学の「踏破イベント」に参加しました。
「踏破」というのは、「足で踏む」の「踏む」と「破壊」の「破れる」
という漢字を書きますが、京田辺キャンパスから今出川キャンパスまで35キロも歩いて行くウォーキングプロジェクトです。

最初にポスターを見た時「楽しそうだなあ」と思って、イベントのスタッフに問い合わせの電話をしてみたら、「35キロもあるから10時間はかかりますね」と言われました。
「ほんま?!35キロ歩くって絶対無理や。だって、電車で行くと21番目の駅やろう?めっちゃ大変や!」そう思った私ですが、諦めるどころか、結局思い切って挑戦してみました。
なぜそんなバカなことをしたか自分でもよく分からないです。

朝9時から夜8時半までずっと歩いていて、やっと今出川に着いた時はもうクタクタ!翌日になっても、体がフラフラして、歩けないほど足が痛かったです。
それでも、踏破イベントに参加して良かったと思っています。
自分に自信がついたし、友達も沢山できて一生忘れられない思い出が作れました。
その日に一緒に歩いて、苦しみと楽しみを分かち合った仲間たちと最後にゴールインした時は、言葉にできないほどの嬉しさと達成感と一体感が感じられました。

一生忘れられないのはその時の感動だけではありません。
イベント開始にあたっての学長先生の言葉も深く印象に残っています。
「青春とは何かというと、人生の一時期ではなく、目標と熱い心を持ってチャレンジに挑戦しようとすること……それが青春です。」なんていいお話しなんでしょう!皆さんはどんな目標をお持ちですか。
皆さんの夢って何でしょうか。

私は、新島襄先生のように、日本で得た知識や貴重な経験を自分の国へ持って帰り、それを生かして、国際交流の場を沢山作っていきたいと思っています。
なぜなら、国と国の相互理解こそが平和への道だと思うからです。
戦争のない平和な世界を作るというのは、遠い夢のように見えるかもしれませんが、決して叶えられない夢ではありません。

 私が踏破イベントに参加して気付かされたのは、「目標があって、仲間と一緒に歩くからこそ頑張れる」ということです。
皆さんも、私と手を繋いで、「異文化を尊重できる社会作り」という目標に向かって、第一歩を踏み出してみませんか。
ホストファミリーになってもいいし、ボランティアとして外国人に日本語や日本文化を教えてあげるのもいいです。

国と国の壁を超えるには、10年、20年、30年かかるかもしれない。
踏破イベントに参加した私のように、疲れてしまって、「もう歩けない」と思う時も必ず来る。
それでも、「絶対無理や!」と思い込まないで下さい。
一緒に頑張って歩いて行ったら、きっといつかゴールインできるはずだから。私はそう信じています。

ご清聴、どうもありがとうございました。



元のページに戻る
[スピーチa]
[スピーチb]
[スピーチc]
[スピーチd]
[スピーチe]
[スピーチf]
[スピーチg]
[スピーチh]
[スピーチi]
[スピーチj]
[スピーチk]
[スピーチl]

[ホーム] [お知らせ] [YE] [弁論大会]
[ライオンズとは] [私達のクラブは] [奉仕活動] [メンバー]
[例会] [リンク] [アンケートにご協力下さい]