2004年外国人による日本語弁論大会 発表原稿
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「不思議な町で、奇妙な出会い」
シン エンヒ
 日本に来てから、そろそろ2ヶ月になります。
この2ヶ月は本当に楽しい日々になりました。
京都の美しさを実感することもできれば、日本の社会や文化に触れることもできました。
そして、中で一番楽しいのは、やはり、いろんな人との出会いだと思います。
さまざまな経験や思いを聞き、考えることによって、自分にも何かヒントとなるからでしょう。

鞍馬山に京都の三大奇祭の一つ、火祭りを見に行った時、東京からガイドとして来られたおじさんに出会いました。
たまたま料理屋さんに行って、人が多くて、そのおじさんと同じ席に座らせられたのですから、それはどんなに奇妙な出会いでありましょうか。
おじさんが話しかけてくれたのをきっかけに、話ははずんできました。
なんとおじさんは昔田村正和さんのマネージャーだったそうです。私が中国人の留学生だと知って、「中国に帰って、日本のよさを中国の人々に伝えてもらいたい」と言ってくれました。
別れた後で、私はその言葉をずっと思い返していました。

「今まで日本でどんなよさを経験したのだろうか。帰国したら、どうやってそれらの経験を母国の人達に伝えることができるのだろうか。」

日本に来てから、最初の発見は音の出る信号です。
中国にも歩行者信号がありますが、音が出ないのです。
だから、日本の音付きの信号を見かけ、とても奇妙に感じて、「さすが電子音社会だねえ」と思いました。
後になって、十字路の信号の音はそれぞれ違うのに気付き、日本人の友達に聞いて、それは目の不自由な方の為なのだとやっとわかりました。そこで、日本で福祉がそれほど普及されているのかと思いました。

そして、今年の京都学生祭典のことにも驚きました
。文化祭程度のものだと思っていましたが、実際に行ってみたところ、かなり大型な活動だと知りました。
京都会館に会場は三つも設定され、警備や宣伝、そして、企画運営などは全て学生が扱っていました。
それどころか、スポンサー探しまでも学生によって行われたのだそうです。
そんな光景は初めて見ました。
中国では「学生は勉強だけすればよい」と思う人が多く、バイトする人が少ないばかりか、文化祭のような行事もありません。
会場で、忙しそうな学生たちの姿を見て、心から感心しました。

さらに、京都学生祭典の中の「21世紀の遣唐使」の報告会を聞いて、また新たな刺激を受けました。
会場は観衆で一杯だったのです。中国文化が好きな日本人がいると知っていても、それほど多くいて、そこまで興味を持っていてくれるのだとは思いがけませんでした。
それに、長い間、中日友好と言っても、あまり抽象的で、自分には遠いと思っていました。
しかし、ステージに立った29人の「遣唐使」を見て、彼らの感想文を聞き、何だか神聖な気がしました。

実は、自分も中日友好の使者なのではないかと思いました。
確かにその時は、自分が日本で経験した全てを、母国の人達に伝えたかったのです。
遣唐使の報
告会の後、一時忘れていたのですが、今、おじさんのおかげで、その時の感動や使命を全部思い出しました。
今まで日本で経験した、例えば、社会福祉が発達していること、日本人の学生の活力と熱意、また、中国文化にあこがれてくれる人が多くいることなど、何でも母国の人達に見せて、日本を解ってもらいたかったのです。

私は日本に来る前から教師になりたいと思っていたのですが、今は一層教師になりたいです。

自分が日本で経験したことを生徒たちに話そうと思っているのです。
しかし、私の短所として、人前に出ると、何しろ緊張してしまいます。
更に、自分の感情を言葉にするのが苦手です。
これらのくせを直さないと、教師になっても、日本での経験を生徒たちにちゃんと伝えられないだろうと思います。
そういうくせを直すために私は学校のスピーチコンテストに出たり、友達を通してサークルに行ったりして、もっと多くの人と接し、交際能力を高める努力をしています。

もし、教師になることができたのなら、一人の教師ですけれども、出会う生徒は何千人もいるかもしれません。彼らに日本で得た知識や経験を伝え、興味を持ってもらえたら、中国自身の発展や、中日の友好交流にはきっと役にたつことでしょう。

この京都という町は、本当に不思議な町だと思います。
この不思議な町で東京のおじさんとの奇妙な出会いは私に自分の将来を考えさせてくれました。
これからの一年間はこの不思議な町でもっと奇妙な出会いを楽しみにしながら、在日経験を中国に持ち帰るためにがんばろうと思います。


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