2004年外国人による日本語弁論大会 発表原稿
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「日本で得た貴重な経験−思いやりの心」
コウ イチホウ
 「思いやり」に対応する言葉は中国語にありません。

ですから、その意味を明らかにするために、肌で体験しなければなりません。
幸運なことに、日本へ行った時に経験した病気のおかげで、私は世間の一番すばらしいもの−−人間の「思いやりの心」を見つけました。

二年前になるでしょうか。
私は国際交流をしている日本のある大学を二週間ぐらい訪問したことがあります。
訪問団の一員として、夢にまで見た日本を初めて訪問する嬉しさでわくわくしていました。
あまり興奮しすぎたのでしょうか。
知らないうちにストレスがたまっていたのでしょうか。
大学の宿舎に着いたと同時に、持病が再発して、寝込んでしまいました。
最初にベッドに横になりながら、失望、いいえ、それは絶望といったほうがいいでしょう。
自分の不幸を嘆き、涙を流すばかりでした。
もし直らなかったら、帰国するしかないと覚悟を決めていました。
異国の地、日本での突然の病気、それは言葉では言い表せない孤独と絶望の日々でした。
しかし、この時ほど人間の愛に触れ、感動したことはありません。

その時、ずっと励まし続け、動けない私のことを何かと面倒を見てくれたのは、その大学の「海外交流委員会」の皆さんでした。
国際課の先生方も、忙しい合間をぬってお見舞いに来てくださり、励ましてくださいました。
そして、仲間の皆さんがホームステイをしていたときに、私だけ行けなくて、とても残念に思っていたところ、それまで、一度も会ったこともないホームステイ先のお母さんが、わざわざお寿司、焼きそば、お好み焼きなどの日本の伝統的な料理を持って来てくださり、一つ一つ説明しながら、私のことをまるでわが子のように一口ずつ食べさせてくれました。
幸せなことに、私はその時から、日本にもお母さんができました。
また、私のことを伝え聞いた多くの外国の留学生の方々も忙しいスケジュールの中を励まし続けてくれました。

病気になって、三日目のことでした。
その時は学園祭があるので、皆さんが忙しかったのです。
皆さんに迷惑をかけたくなかったので、「大丈夫だよ。たくさん写真を撮ってきてくれる?学園祭を見たいから。」と言って、皆さんに帰ってもらいました。
病気になってから、ずっと痛みに悩まされ続け、ぐっすり眠ることができませんでした。
静かな病棟に一人横になっているうちに、いつのまにか寝ていました。なんとなく騒がしい音に、目覚めると、ベッドの周りに留学生の皆さんが見舞いに来てくれていました。
私は思わず、「えー!」と言うだけで、涙がぽろぽろとこぼれていました。
柔らかく、長閑な太陽の光が窓から差し込んでいました。
私は皆さんの愛に囲まれ、とても幸せでした。
皆さんの髪、肌の色、また、国はそれぞれ違っていますが、そこにはまぎれもなく同じ思いやりの心があります。
それは世界で一番美しい、愛のこもった光景で、一
生忘れられない光景でした。

幸い、みんなの思い、そして、私の願いが通じたのでしょうか。
少しずつです
が、回復に向かいました。
そして、4日目にすこし歩くことができるようになりました。
日本のお母さんはたいへん喜んでくれて、着物を着せてくれたり、茶道とお琴を詳しく教えてくれました。
「短い間でも、日本の伝統文化を体験してもらいたい」と笑いながら話すお母さんを見て、感謝の気持ちでまた涙が溢れました。
着物を着て、お琴を習い、日本の伝統文化に触れながら、もう一つの熱いものも心の中に湧いてきました。

そうです。
その時受けた皆さんの言葉と、いただいた熱い思いは、人間が持つ何よりも美しい「思いやりの心」そのものではなかったでしょうか。
「無償の愛」そのものです。
私たちは日常の生活の中で当たり前のこととして、この愛を受けたり、与え合ったりしています。

21世紀のグローバル化社会において、異文化コミュニケーションは何よりも大切なことです。
他の国の言葉と文化を尊重し、理解することは大変重要です。
私たちが生まれながらもっているこの思いやりの心も大切にしていきたいと思います。
最近、私達の身近なところで、悲しく、暗いニュースがあまりにも多いような気がします。
毎日の生活に追われ、ゆとりのないせいでしょうか。
お金に目がくらみ過ぎているせいでしょうか。
日本でのこの貴重な体験に恵まれた私は、人間を信じています、人間の愛を信じています。
今こそ、みんなが心から助け合い、思いやりの心を持って生きることです。
それは中日友好のためであり、世界平和へと続く道であると信じています。

私は今、日本語の教師を目指して、勉強を続けています。
中日友好の架け橋になりたいのです。
それは、私ができる、そして、実現できる道であると思ったからです。
自分の行動で「思いやり」という尊い心を伝えて、多くの人々に私の愛を差し上げたいと心から思っています。


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