「日本での経験を生かして
接続可能な世界を作るために」
シゲオ ノムラ
  ブラジルから日本へ旅立つと、地球は驚く程広いということが実感できます。多分、一直線に地球の中心に向かって日本から穴を掘っていけば、母国にちょうど出るのではないかと考えられます。
今までの経験を基に、それほど離れている国と日本を比べることになると、たくさんの違いがあらゆる面で出てきます。
たとえば、人間関係による挨拶の仕方、会社や学校での上下関係をはじめとして、人間と自然環境の共生まで、大変な違いがあると言えます。

 人と人が出会った時の挨拶の仕方に関しては、身体と身体の触れ合いが有るか無いかが大きな相違点になっています。私の国では男性同士の場合は、握手をするのを原則としています。
そして女性と男性、あるいは女性同士の場合は、頬にキスするのが、特に若者の中では原則とされています。また、もっと親しい場合、抱き合ったりすることも許されています。
このような触れ合いによって相手を敬い、また相手に対して親しみを表すのが、大切なこととされています。逆に日本では、そのような触れ合いがあった場合、大変な問題になるかも知れません。

 会社や学校での人間関係を日本と比べると、母国ではほとんどといっても良いくらい、上下意識が無いのが現実です。
例として、会社や学校でも先輩と後輩との関係が、上から下もしくは下から上という強いものではなく、全員平等のような感じで行動するのが普通とされています。
目上の人を呼ぶ時にも、日本のように、学校で“さま”または“さん”を付ける必要が無く、そういう必要の無い会社も多くあります。

 自然環境との関係については、母国の場合、広い土地を持ちながら、たとえば農業用地や材木の獲得を理由に、アマゾンの原始林は、年に何万ヘクタールという大面積が破壊されています。
一方、日本に目を向けて感心するのは、土地がとても貴重なこの国で、山や自然環境などが、多く残されていることです。
また水や大気の汚染をなるべく避けるための、ごみや排気ガスに関する対策は、日本と比べて、私の国では、ほぼ行っていないと言えます。

 よく考えてみれば、最初の二つの例は、それぞれの国で長年にわたって作られた習慣であり、その国の重要な文化として、保存することが大切だと思われます。

 しかし人間と自然環境との関係については、人類が国境の無い、地球上の生物種として存在するかぎり、自然環境保護のために、もっと一体となって行動し、対策をたてる必要があると言えます。
大きくて強く見えても、実はデリケートな自然と、小さくて弱そうでも恐ろしい人間との、誤った関係の結果である地球環境の変化が、いつ、具体的にどのような被害を、生物にもたらすか、という課題が頻繁に研究されて来ています。

 ある調査によれば、地球上の97%以上は塩水であり、残りの約3%の内、わずか1%が河川、湖、池などとして存在しているだけです。
その貴重な水源に、人間は現在なんと一日に300万トンという、莫大な量のごみを流したり、捨てたりしています。
このように人間は、生きて行くために最も必要な水が、不足するという、大きな問題の原因になる行動を行っています。

 なお、近世まで、水は太陽からのエネルギーによって、地球上を健全に循環していたのが、現在は悪循環に陥って、好ましくない状況が起きています。
たとえば、洪水、地下水不足、砂漠化などが挙げられます。それらは、中でも温暖化や生態系破壊を無視して、利便性や経済性のみを優先させてきた、近代都市の在り方のために、自然環境を大きく改変した結果とされています。
母国でも、そういった悪循環によって、特に都市部に近い地方では、雨量が正常でなくなり、旱魃が発生したり、あるいは洪水が発生するようになったりして、農作物が昔のようには取れなくなっています。

 つまり、専門家による自然環境問題の予測がすでに顕在化し始め、数十年後に食糧危機に至る、という恐れを強く感じるようになってきています。
そういった危機的状況を避けるための取りくみとして、日本では自然環境保護政策に向けた、自然農法の事例があげられます。
その農法に関して、簡単に言えば、無農薬、無肥料、そして耕さずにという前提で、自然に優しく、土地利用を行って生産するという、運動のことです。

 ここで国々が一緒になって、自然を守る方向に向かって、世界的破局という最悪のシナリオを避け、望ましい、安定した、持続可能な世界をつくるために、自然環境保護対策に力を合わせて、取り組む必要があると言えます。
要するに、現在の世界を救うために、今流行のグローバリゼーションという言葉を、人間と自然環境の共生を基に、もう一度じっくり考えてみることが、重要ではないかと思います。

 私は、そう言った共生をテーマとする研究が、最新的に行われている日本で、出来る限り知識や経験を積み重ねて、発展途上国の母国に、その学んだ内容を技術研究者として、取り入れるつもりでおります。
そしてさらに、その研究分野を普及するための活動を行い、国際的にも認められるようになり、真に持続可能な世界を作るための運動につくす希望を持っております。


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