日本での経験と将来の私
「日本の高校の教育実習を終えて」
イ ヒョーヌ
李 玄雨
 人は大概自分に与えられた環境で、自分のため、或いは他の何かのために一生懸命生きようとする。
しかし、ある人にとってはその環境が重荷になって自分の成長の妨げになる場合もある。
そこで、より自分に相応しい環境を求めてその人は旅に出る。
ひょっとすると、私がその種類の人間なのかもしれない。
私はより勉強ができる環境を求めて韓国の田舎からソウルに上京、そして日本に留学した。
これこそ私にとって大きな夢の実現であったし、今は京都の大学で教師への夢を繰り広げることができた。

 私が通っている大学は教育大学で、そこで4年間いろんな思い出を残したが、特に今年9月にあった1ヶ月間の教育実習は私にとって一生忘れられない、記念すべき思い出であった。

 その1ヶ月間、私は京都教育大学付属高等学校に配属され、「政治経済」という科目を受け持つことができた。
その実習のため2年前から心の準備をしてきた私にとって、さすがの教育現場は私の想像以上のものであった。
それは、自分がある知識をただ伝えるだけではなく、充分な教材研究はもとより、それを如何に生徒側に活かせるかという高度な技術とコツが要求されていた。
さらに、私にとって日本の政治経済という科目はゼロからのスタートということもあって、教材研究をしている間にも自分が知っている知識より学ぶことが多く、それをどのように生徒側にうまく伝えるかに頭を悩まされた。

 教壇に立つ初日は、とても震えて深呼吸を3回し、教壇に立った。そして50分間自分が何をしゃべったか分からないうちに終わりのベルがなってしまったのである。
自分が高校のときあれほど長く感じていた50分間の授業がこんなに短かったのかなと思うと、不思議な気がした。

 1年生の政治経済を担当していた私はどのクラスに入っても1回目の授業から注目の的であった。
クラスの騒然とした雰囲気の中で生徒たちはものめずらしそうに私を眺めていた。
そこで、私は騒然とした雰囲気を利用して冗談をおり混ぜながら授業を進めた。
そしてさらに、授業の内容に挟んで韓国の話をする時には、朝昼関係なくどのクラスでも、誰一人寝ようとしないで喜んで授業を聞いてくれた。

 2回目の授業には、生徒たちがもっと真剣な眼差しで授業に参加してくれて、そのおかげでわたしも一生懸命に授業を進めることができた。
しかし、実習の全てがこのようにうまくいったわけではなかったのである。
実習期間中、教材研究の大変さやあまりのプレッシャーによって落ち込んでしまうこともあり、実習を辞めたいと思った時も何回かあった。
それでも、私は生徒たちの輝く目つきの期待にそむかないように、毎晩徹夜で教材研究にのめりこんだ。

 また、学校での文化祭の時には、生徒たちとの触れ合いの機会も多く与えられ、授業以外のいろんな話で盛り上がったりして、日韓の文化交流も同時に持つことができた。

 実習最後の日には授業の流れとして、「国際化時代の日本政治」という小テーマで、私の感想を授業の最後に触れたことがある。
それは、最近グローバル化を訴えている日本政府とそれに準備できていないような日本の国民を、私が日本で経験したことや感じたことを踏まえながら、生徒たちに伝えた。
そして、生徒たちからの反応を感想文にしてまとめてみた。
ここでその幾つかを皆様に紹介したいと思う。
(1年5組の感想)
「人種と民族の間の壁というのは何であるのだろうと時々思う。日本という国は、アジアの中では1番といって良いほど進んでいるとは思う。なのに、なぜアジアの国々の人々から良いように思われないのか?それは、日本という国はどちらかといえば、ヨーロッパの方に一生懸命に入り込んで、アジアの国々のことを考えてあげなきゃいけないのに、逆にアジアの人々をバカにしているところがあるからだと思う。」
もう1つの感想、
「日本人では普段見えない部分が見えてきたように思う。政治のあり方というのは自分の国だけが良ければ良いものではなく、政治の勉強をするにあたって、他の国の視点を知れるのは貴重な体験だったと思う。」
このような感想文を書いてくれた。

 私がこの度、教育実習を通して得たものは語り尽くせないほど多く、何よりも今まで外側からしか一方的に日本を見ることができなかった自分が、この度の教育実習を通して内側から本当の日本をみることができたのである。
私はこれを契機にこれからもさらに日本のことを学び、愛していきたいと思った。

 聖書には「涙とともに種を蒔くものは喜び叫びながら刈り取る」という言葉がある。
本当に自分が苦労しながら精一杯の種を蒔き、それを刈り取る時の大きな喜び、それこそ大きな収穫であり、語り尽くせない貴重な体験であることがこの度の教育実習を通して実感できた。

 来年大学を卒業し、国へ帰る私は一生忘れられないこの貴重な体験を胸に収め、どんな試練にあっても負けることなく、日本でのことを思い出しながら、教職を目指して頑張っていきたいと思う。

ご静聴ありがとうございました。


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