日本での経験と将来の私 「日本での経験と将来の私」 |
|
コウ トウニ 高 冬 |
「この21世紀に、人類は応用生物の分野でめざましい発展を遂げました。今や我々は高分子物質の極めて複雑で多様な構造と機能の解明に成功しました。」 今、私は世界の生物学者の前で、自分の研究成果について発表しています。 私の長年にわたる研究の成果です。何年にもわたる努力の結果、夢はとうとう現実のものとなりました。数年の努力を思い出すたびに涙が思わずわいてきます。 これは数年後を空想した場面です。言わば私の夢です。 この夢が叶うかどうかはまだわかりません。しかしこのことは自分の努力次第だと思います。 一生懸命頑張れば、夢は必ず実現すると思います。 日本に来てから、その思いはますます強くなってきました。 日本に来て、もう半年になりますが、人に話せるほどの経験はまだありませんが、多くのことを学ぶことができたと思っています。 「どうして日本に来たんですか。」 とよく質問されます。 他の留学生も多かれ少なかれ同じような気持ちを持っているでしょうが、私は「両親を離れて独立したいと思ったんです。」といつも返事をしています。 ところが来日前の私にとって、日本に来るということは相当な勇気が必要なことでした。 なぜなら私は中学の大学でまだ2年しか勉強していませんでしたから、卒業しないうちに日本に来るということは常識的には全く考えられないことでした。 中国では大学に入ることが非常に難しいことで、高校生だった私は入れるかどうかだけしか頭になかったものですから、両親の薦めに従って、あまり深く考えないで法律を選んでしまいました。 しかし、中国での大学生活は、法律にあまり興味のなかった私にとって決して楽しいものではありませんでした。 そんな時、友達からたまたま日本の大学のことを聞いて、京都に留学するチャンスに恵まれました。 京都に来たものの、環境が全く変わっただけでなく、周りの人たちの考え方も全然違っていて、とても戸惑いました。 その上、専門を何にするかという重要な問題が残されていました。 何をどうしていいかわからなかったけれど、先ずたくさん情報を集めることから始めようと思いました。 先生や先輩、友達からいろいろアドバイスをしてもらいました。 「日本で就職したいんですか。それだったら、留学生にとって就職しやすいのは理科系のほうですね。文科系だったらやはり法律がいいでしょう。」 周りの人はみんなそう言いました。 私は非常に悩みました。 中国での専門は法律でしたから、法律に進むのが一番いいと誰もが考えるでしょう。 でも一方で、本当にそれでいいのだろうかという気持ちもありました。 「法律は人気がある学部だし、あなたの中国での専門は法律だったんだから、絶対に放棄してはいけないよ。」 と先輩に言われると、どうしていいかわからなくなりました。 両親を頼りたかったのに、電話をしても「自分で決めなさい」と言われてしまいました。 法律を続けるとすれば私が日本に来た意味はあるのでしょうか。 自分自身に問いかけました。 自分のやりたい道に進むことこそが日本に来た目的ではなかったのか。 では、一体何を本当にやりたいのか、自分の心に問いかけるうちに、幼い頃から見ていた父の仕事のことが、私の心の中でだんだん大きくなってきました。 父は生物の教師をしていて、小さな生き物の解剖をよくやっていました。 それを私はいつもそばで見ていました。 そのとき 「私のやりたいことはこれだったんだ」 ということがはっきりわかりました。 外国にたった一人でやって来て自分自身を見つめ直し、進むべき道を見つけることができたということが、私にとって一番大きな出来事でした。 自分が選んだこの道には本当に困難が待ち受けているとは思います。「人間は苦しさとともに成長するものです。苦しくても、努力を続けていけばいつか成功するでしょう。」と友達も勇気づけてくれました。確かに苦しみが大きければ大きいほど、成功したときの喜びも大きいはずです。「がんばっていこう」と自分自身を励ましています。 私は日本でのテンポの速い生活にだんだん慣れてきました。 そして、時間とチャンスの重要さがわかってきました。 日本のような先進国では、時間は命だとも言えるでしょう。 チャンスをいかに生かすかで、人生が変わってしまいます。 留学生の生活は大変忙しいですが、充実しています。 アルバイトに勉強の時間を奪われています。だから1分たりともむだに使いたくないです。 バスや地下鉄の中も留学生の勉強の場所になっています。 こんなに競争の激しい社会でチャンスを生かせる人は幸せです。 実はチャンスは私たちの周りにはいっぱいあるんですが、それを生かせるかどうかが問題です。 ほとんどの成功者はつかんだチャンスを人一倍の努力によって十分に生かした人だと言えるでしょう。 生物学者になりたいという夢が叶うよう、日本に来ることができたチャンスを十分に生かしてがんばっていこうと思っています。 |