朝から晩まで

イ ソンへ
李 仙恵 

 今年の4月28日,関西空港に降りたって私の最高の初めての一人暮しが始まりました。
待ちに待った日本行!私は日本に来たのです。

 大学の時「日本学」が専攻で,「日本学」と言うのは日本と言う国を研究の対象として客観的な立場から日本の経済,政治,歴史,文化などを総合的に研究する地域学です。
たとえば日本に「もの」を売りたいとします。その時 日本的経営システムとか日本の文化が分かったらもっとたやすく売ることができるでしょ。そういう学問です。
本から習った日本学を今年 日本に来て日常生活の中で経験的に習うことができました。

 「日本の文化と日本語の勉強」には「テレビが最高の先生」と言うまわりの人々忠告でテレビも買いました。私のスピーチのテーマが「朝から晩まで」なので「いったい朝から晩まで何があったんだろう」と疑問を抱いている方もいらっしゃると思います。
それはテレビを見たら「朝から晩まで」料理のバングミが続いていることでした。
どうして日本人はこんなに「食べもの」のことに執着しているのか?
 みなさんも気付いているとは思いますが今日 これについて話してみたいです。

 私も料理が趣味の一つで,今テレビを見ながら日本の料理を楽しくすこしずつ習っているところです。
やっぱり料理のバングミの時間帯のことですが韓国では主婦たちのためにある決まった時間,だいたい午前9時か10時ぐらいと午後6時ぐらいにしかやってないですけど日本はテレビをつけたらいつでも料理のバングミが出て来ます。
専門的な料理のバングミじゃなくても外のプログラムですけど ちょっとずつ料理を紹介したり食べながらプログラムを進行したりもしました。

 またどこのお店がおいしいとかどこの地方の何々が有名だととかにみんな熱心で世界のあっちこっちに行って おいしいものをいっしょうけんめい捜して食べているのでした。
 私の日本人の友だちの中には 韓国にわざわざ食べに行く人もいました。
 日本ではこのように「お料理にお金をかける人」「おいしいお店に行っておいしい料理を食べる人」を「グルメ」と言うそうです。

 また面白いことが一つあります。
 それは できあがった料理を食べる人々の表現方法でした。私はこの表現方法から ある形式性を見つけましたが 心を込めて作った料に対して必ず反応を示さなければならないです。
 それを何回も何回も繰り返して「おいしいーおいしい」と言わなければならないように思われるほど大げさに言っていました。
でも、みんながおいしいと言うからそれが本当においしいかどうか分からなくなるでしょう?
それでまたみんなが必死になってそれが なぜおいしいかを説明しようとします。
これは私にはすごく不自然のように思われました。 

夏休みに韓国から友だちが遊びに来て四条のある有名なアイスクリームの店に行ったことがあります。
 その時また びっくりしたことがあります。
 33度を越える真夏日でした。50人ぐらいの人々がその店の抹茶アイスクリームを食べようと行列を作って待っているのでした。
2時間後私たちの順番になると言われて二人ともびっくりして何の未練もなくすぐその場を立ち去りました。これは気の短い韓国人にとってはとうてい理解できないことでした。

 韓国では何でも「早く早く」と言うからお料理屋さんに行っても「早くしてください」と言って早く食べて早く帰る傾向があるのでこの場合 韓国人だったら90%以上はちょっとまずくても外の店に行ってしまいます。
 また店の主人はもっと大きい店をオープンするにちがいないです。

 今寮に一緒にに住んでいる日本人に「なぜ行列を作って待っているのですか」と聞いてみたら「その店なりの特有の味があるから それを食べに行くから何時間も待って食べるのです」と答えました。
 でも「なぜ料理のバングミがこれほど多いのですか」と知り合いの日本人に聞いてみたら「そう言われるとそうですよね」と言いました。やっぱり気付いてなかったみたいです。

 私なりに その理由をいろいろな角度から考えてみたんですけどなかなか結論が出なかったです。
みなさんは なぜだ思いますか?

 その理由は日本人は元々味覚と美覚が優れているせいかもしれません。

 でも私の考えでは日本は第2次戦争が終わってからアメリカの核の傘の下でただ「経済成長」のために走って来ました。
 そして60年代から世界に類を見ない奇跡的な「高度経済成長」をなしとげて経済的に世界一になりました。
 日本の今の世代はこういう「豊かさ」の中で生まれ育ちました。
 すべてのことがちゃんと揃えられている,「ものの豊かさ」と「心の豊かさ」があります。

 人間は生きて行くために基本的に必要な条件「着ること,食べること,寝ること」が解決できたら その後はもっと高くてきれいな服がほしくなり,もっとおいしいものが食べたくなり,もっと立派な家がほしくなります。
それで日本人はブランドが大好きで「グルメ」と言う言葉も出たのかもしれないです。

 日本は何となく私になじめないものを感じさせます。

 変化を追求しない,やる気もない。
 今までの通り流れて行く。
 これが先進国の本当の姿なのか?
 人間は生きて行くために食べるのか,食べるために生きて行くのか。
 これは私にいろいろなことを考えさせました。
 「本当の豊かさ」っていったい何だろう。
 これはこれからの日本の宿題だと思います。

以上です。


[スピーチa][スピーチb][スピーチc][スピーチd][スピーチe][スピーチf]
[スピーチg][スピーチh][スピーチi][スピーチj][スピーチk][スピーチl]

 

[98年の弁論大会の目次戻る]
[99年の弁論大会戻る]
[トップページに戻る]