テイ シュンカ
鄭 俊華
もし、「日本文化のどこが好きか」と聞かれたら「擬態語が一番魅力がある」と答えます。
仮に日本文化を限りない海にたとえたら擬態語はただその中のごく小さな一つの水滴に過ぎないのです。
でもまさにその極小さな水滴に日本語と他の国の言語の違いが現れ、日本語の中の一番花の咲いているところになっていると思います。
振り返ってみると中国で大学二年生のときこんなことがあったのです。
当時通訳という授業がありましたが、その授業の期末試験は先生と学生が一対一という形で行われました。
先生が前もって用意した沢山の紙の上に一枚ずつ一つの文が書いてあります。
その中から10枚を選んでその場でなるべく短い時間の間にその文を中国語に訳すと言う試験でした。
最後に選んだ紙に書いてあった文は今でもはっきり覚えています。
「約束を破ったので友達はカンカンに怒っている」という文でした。
時間は1秒1秒と経ちましたが「かんかん」にピッタリする中国語はどう考えても頭に浮かんできませんでした。
とうとうその文を訳せないまま時間が来てしまいました。「非常に」と同じ意味なのになんで「カンカンに」怒っているのですか。
ばかげた擬態語のせいでよい成績が取れませんでした。その時から擬態語に偏見を持つようになってあってもなくても文の意味は大した変わりがないから日本語の余計な部分だと思いこんでしまいました。
その後先生から擬態語をいっぱい教えてもらいましたが、私にとってノートのメモに過ぎなくて頭の中に全然入りませんでした。
ところが日本に来てからほんの些細な出来事で私の擬態語に対する気持ちがすっかり変わりました。
春爛漫のある週末の午後友達と一緒に円山公園へ散策行ったときのことでした。
満開の桜のしたに座って春の躍動する息吹を感じながらピンクの花の海に心酔しました。
果てしなく蒼い空、ゆっくりと流れていく白い雲を見ながら空気の中に漂っている生き生きとした生命力が感じられました。
思わず「今日は本当にいいお天気よね」と隣に座っていた友達に言いました。
「そうね、ぽかぽかした天気よね。」と彼女は答えました。
一瞬目の前の立体で、動いている絵のような美しい景色は全て「ぽかぽか」という言葉の中に含まれていたと強く感じました。
ずっと嫌いだった擬態語の魅力をその日初めて感じました。
なぜ急に擬態語をこんなに美しく思いましたのか。
これまで覚えた擬態語は教室で教科書の単語としてならったものですから私にとって全然生き生きしていない仮名文字に過ぎませんでした。
でもその日この目で綺麗な景色を見てこの肌で和やかな雰囲気を感じてその時耳に入った擬態語はその場面の全てを総括する役を果たしました。
だから生き生きした躍動感を与えることが可能だったのだと思います。
擬態語を魅力的に感じて美しく聞こえるのも当たり前のことのなってきました。
その日から擬態語に興味を寄せてきて友達と話しているとき相手の話の中にでてきた擬態語にも倍以上の注意を払うようにしました。
しかし日本語の中の擬態語をいかに中国語に訳したらよいのかという問題でまだ悩んでいます。
なぜかと言いますと中国語には日本語の中の擬態語のような言葉の数はずっと少ないからのです。
従って擬態語は日本語の独特な特徴で魅力のある部分だと思います。
でもなぜ日本語の中にこんなに沢山の擬態語があるのでしょうか?
その原因を探そうといろいろ考えてみました。
日本は海に囲まれて沢山の山に覆われています。
そして春にはピンクの桜に飾られ、
夏には緑のスカートに着替え、
また秋には赤い紅葉に着飾り、
冬には純白の雪に尋ねられます。
ですから四季にはそれぞれ独特なイメージがあって違いがはっきりしています。
昔からこんなに美しい大自然に恵まれていた日本人はすっかりその美しさにとけ込んで大自然の生き生きとした生命力を十分感じたと言えるのでしよう。
ですから知らず知らずのうちに大自然が与えてくれたその生命力が普段使っている言葉の中にも現れるようになってきました。
このような状況の下で今日言われている擬態語が誕生しました。
また、日本は大自然の恩恵を受ける一方台風、地震、噴火などの大自然の恐ろしさもいろいろ体験しました。
変化に富んでいた自然環境によって豊富な感情と敏感な感覚を育てられて日本人は様々な感覚をそれぞれ違う擬態語で表現するようになってきました。
擬態語がこのように数多くあることはそこに原因があると私は思っています。
言葉の違いを日本に来てから肌で感じました。
違っているからこそ面白みがあるといえます。
面白みがあるからこそその魅力がいっそう感じられます。
これからも、もし誰かに「日本語のどこが一番好きか」と問われたら、
私はやはり
「擬態語に決まっています。」
と答えます。
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