サブダ チャールトン
Sabdha Charlton
私はメルボルン大学のサブダ・チヤールトンと申します。現在、立命館大学に留学しています。日本に来た理由は二つあります。
まずは、やはり日本語を勉強するためですが、もう一つは卒業論文の研究のためです。
京都でパフォーマンス・アートとジェンダーやセクシュアリティーやアイデンティティーの関係を調べたいと思っています。
では、なぜ日本のそういうことに興味があるのでしようか。
実は、もともと日本に興味はあまりなかったんですが、6年前、偶然に日本の小田原で10カ月ぐらい英語を教えました。
高校を卒業したあと世界のどこかでワーキング・ホリデーをしようと思ったんですけど、どこにするかちゃんと決められなかったんです。
その時、私の友達は、日本に住んでいるお兄さんと1カ月ぐらい滞在つもりだと言い、嬉しいことに、私も誘ってくれました。
そのおかげで、日本に来ることができました。その10カ月は、私の生きる道を変えました。
その前に生物学を勉強したいと思っていたので、ワーキング・ホリデーの後帰国した時、大学で科学を勉強しなければなりませんでした。
日本に来る前に日本語は全然勉強したことさえなかったけれども、その経験から日本語を習いたくなってきて、そのために大学の専門は科学だけから科学と文学に変えました。
やはり文学部で日本語や日本学を勉強したけれとも、その他女性学、特にジェンダーやセクシュアリティーの社会的理解に興味が移ってきました。
というわけで、去年、卒業論文のテーマを決める時、その日本におけるジェンダーやセクシュアリティーについて書くのは、私にとって、とても意味があると思いました。
そうしたら、日本に来る前、Eメールやインターネットで異性愛以外の愛の形を表す「クィアー」というものを検索して、「東京レズビアンとゲイ映画祭in関西」や「エイズ・ポスター・プロジェクト」というNGOについて知りました。
「エイズ・ポスター・プロジェクト」は頭文字をとってAPPと呼ばれています。
京都に着いた後すぐそのグループのミーティングに参加して、いろいろな人と知り合って、
「Club Luv+」というイベントに誘われれました。
Club Luv+はAPPのために毎月あるベネフィット・ナイトで、とてもゴージャスなショーとダンスミュージックのイベントです。
そのショーは、ニューハーフやパフォーマンス・アートみたいなことをやって、エイズのことをよく知らせるためのメッセージがあり、同時にジェンダーやセクシュアリテイーやアイデンティティーの問題をとても面白く表せると思うので、それについて書きたくなってきました。
では、もうちょっと詳しくそのことについて説明をしようと思います。
Club Luv+のショーは普通のニューハーフに似ているけれども、同時に批評しながら内容を膨らませています。
この出演者はドラッグクィーンと呼ばれています。ドラッグクィーンは、だいたい男の人が女装して、歌姫のように歌を歌います。
その男の人は女のジェンダーの役をするわけですが、このことで、すべてジェンダーは誰でもできることを示すのです。
これで、男は男、女は女であるという考え方は、実は自然なものではなく、社会的に作られたものであることを示しているのです。
一方で、ドラッグクィーンは「男は男らしくあるへきだ。女は女らしくあるべきだ」という社会一般の考え方を誇張的に表現しています。
たとえば、もし男の人が女っぽかったら、やはりゲイと思われ、同様に宝塚歌劇の男役は男っぽいからレズビアンだと思うような文化があります。
たぶん、このような考え方の方が一般的でしょう。
しかし、Club Luv+のショーで、ジェンダーは作られたものということはとても明白に示されています。
よくClub Luv+のショーの中で、出演者は女性の衣装を脱いで、もともとの男の体を見せます。
同様に、女性も男性も女装や男装やいろいろな服装をしたり、ジェンダーを混乱させたりして遊ぶこともあります。
この遊びもとても大事なことだと思います。
ショーはゴージャスな見せ物だけではなく、たいへん笑わせることもできるから、見るのはとても楽しいのです。
お客はそのショーのメッセージを笑いながら理解することができるようになります。
Club Luv+はAPPのためのベネフィットナイトなので、こうやってお客さんを笑わせながら、ジェンダーやエイズや安全なセックスの知識を広げる行動をしているのです。
APPは、最近日本で増えているNGOというものの一つだと思います.Club Luv+以外にAPPの活動は世界中からポスターを集めたり、APP Paperと呼ばれるニュースレターを出版したりします。とても立派な目的だと思います。
私にとって、このClub Luv+やAPPの人々と個人的に知り合うことができたことはとてもいい経験でした。
研究のためにClub Luv+の出演者やスタッフにインタビューをしたり、私自身がスタッフになったりしたことは私の考え方を豊かにしてくれ、私を成長させてくれました。
Club Luv+の周りのみなさん、本当にどうもありがとうこざいます。
パフォーマンスアート | パフォーマンスは演奏、上演、実行、性能などの通常の意味とは別に,
既存のジャンルや枠組みから外れた芸術や社会行為を指す幅広い概念。 〈パフォーミング・アーツ〉(舞台芸術,上演芸術)から区別された意味での 〈パフォーマンス・アート〉は,1950〜60年代の〈ハプニング〉や〈イベント〉 の延長線上にあり,今日ではこれらを含めて 〈パフォーマンス〉ないしは〈パフォーマンス・アート〉と呼ぶことが多い。 ハプニングやイベントは,既成の様式やジャンルを解体する〈反芸術〉であり, 1910年代のイタリアの未来派やダダの影響を受けている。 そこでは,まず,演劇,音楽,美術といった固定したジャンルが成立せず, 〈芸術〉と〈非芸術〉(日常)との間に引かれていた一線も撤去される。以下略 (日立デジタル平凡社 1998年版世界大百科事典より引用) |
本文に 戻る |
ジェンダー gender |
社会的文化的な性別 セックスsexが生物学上のオス・メスであるのに対して、 ジェンダーは社会的・文化的につくられる〈男らしさ〉〈女らしさ〉のこと。 男女の性役割や行動様式、外見、心理的特徴をいう。 たとえば小さな子どもは、〈男の子は泣かないものだ〉 〈女の子みたいにめそめそしてはいけません〉と叱られることによって、 社会のなかで一般的なジェンダー観というものを知り、 それに従ってふるまうことを学習する (これをジェンダー・アイデンティティの形成という)。 −−−中略−−− このようなジェンダー観がどのように男性中心社会を支えているかの 解明が、女性学やジェンダー研究などの課題となっている (マイペディア97より引用) |
本文に 戻る |
セクシュアリティー | ジェンダーが性的欲望を切り離して性差を考えるのに対して
セクシュアリティーは性別、性的衝動、性生活などの 性的欲望に関連するいっさいの事象を意味し、 心理学的な用語として,好んで用いられている。 性欲は体験,学習,外的刺激に依存する面が大きく, 単なる性衝動の発現ではなく, 個人の生育史,社会,文化の影響を著しく受けるものである。 (日立デジタル平凡社 1998年版世界大百科事典より引用) |
本文に 戻る |
アイデンティティー | 自我によって統合されたパーソナリティが,
社会および文化とどのように相互に作用し合っているかを説明する概念 アイデンティティの概念には,二つの使われ方が見られる。 一つは個人の他者に対する社会的隔たりに関するものである。 人びとは社会的な相互作用のなかで自己と他者との隔たりを操作し, 状況を自己にとって有利なものへと導いていこうとする。 もう一つの使われ方は,パーソナリティの核心に関係するものである。 それは個人においても,集団においても,過去から現在へ, そして未来へという時間的な継続性のもとにあらわれてくる。 (日立デジタル平凡社 1998年版世界大百科事典より引用) |
本文に 戻る |
ワーキングホリデー | 若者たちを対象に, 一定の条件付きながら外国でのアルバイトを認めることで, 訪問先に長期滞在することを可能にし, 滞在国への理解をより深めてもらうことを目的にした制度。 現在オーストラリア,ニュージーランド,カナダとの間で交流が進められおり, この制度を利用してこれらの国に出かける若者は毎年1万人を超えている。 (現代用語の基礎知識98より引用) |
本文に 戻る |
クィアー queer |
同性愛、同性愛者 | 本文に 戻る |
NGO | 非政府機関、民間開発協力団体 | 本文に 戻る |
ベネフィトナイト | 慈善目的の演劇などの興業 | 本文に 戻る |
[98年の弁論大会の目次に戻る] |
[99年の弁論大会に戻る] |
[トップページに戻る] |