発刊によせて「大自然と生きる」
2002年12月2日
京都西ライオンズクラブ
C N 4 0 周年記念事業部会長
『西山の自然』編纂委員 内藤登喜夫
春、花咲きて蝶群れ飛ぶ野辺、夏、魚泳ぎて蜻蛉飛び交う池畔、秋、木の実熟れ鳥啄ばむ林下、霜柱立ちて春待つ田圃の見える丘にて、心澄ませて独り座し、美しき西山の風景を眺める時、空想は果てしなく大空を駆け巡ります。
不思議に思うには、なぜ生命が生まれ、どうして限りなく進化発展せねばならないのか、花はなぜ美しいのか、野鳥や獣類、華麗に舞い擬態する蝶や昆虫、珊瑚礁に棲む色鮮やかな魚類たち。
いずれを見ても進化の理念を遥かに超え、多彩で美しい色や不思議な形態を備えているのはなぜだろう。
スマトラには、ブドウ科に寄生するラフレシア( Rafflesia) と呼ぶ直径1.5mにも及ぶ世界最大の花を咲かす植物があります。
花は生殖器官が異常発達したものといわれますが、このような巨大な花を持つ必要性があるのでしょうか。
植物撮影の時、レンズを通して眺めると、大きな花でもどのような微小な花であっても、それぞれの子孫を永遠に継承するに必要な生殖器官が多種多様に形成されていて、受精に必要なポリネーター(花粉媒介動物)である蝶や昆虫、鳥などを誘引します。
花や果実に訪れる生物たちも、植物の種類によって適応した器官をもち、異性との出会いや外敵から身を護るためなのかしれないけれど、千差万別に不思議な形態をしています。
それは大地につながる生命の強さを感じさせ、人類が自然を大切にして環境保全に努め、次世代へと受け継いでいかなければならないことを教唆しているように思えるのです。
野生植物は人間がいなくとも繁殖できますが、人間は植物が無ければ絶対に生きていくことはできません。
“美しい大自然”これは地球という惑星の貴重な財産であり、私たちは『自然環境保全』について真剣に取り組まなければなりません。
京都西山周辺は水田や畑、貯水池、小川、疎林や森林からなる豊かな自然の残っている唯一の地域です。
この里山には約1200種の植物が自生し、その植物からなる食物連鎖によって数知れない生物を育み、生命の豊かさを伝えます。
本書では、水と緑の恩恵からなる豊かな自然と、その里山の自然保護に努める人たちを知っていただき、自然環境保全への啓蒙の一助になればと願って止みません。
|