2008年外国人による日本語弁論大会 発表原稿
ビデオはここをクリック
「心を日本に開けよう」 キン シン
中国
 皆さん、こんにちは。
京都大学工学部に通っておりますキンシンと申します。
今日私が発表するテーマは心を日本に開けようと言います。

1997年に私が小学校を卒業し、地元瀋陽の東北育才学校の外国語コースに合格し、英語コースを志望しましたが、希望通りにならず、日本語のクラスに入れられてしまったのです。
当時日本に対して僕があまりいいイメージを持っていませんでした。
勿論日本語も勉強したくありませんでした。
しかし学校をやめるわけにはいかず、嫌がりながら日本語の勉強を始めたのです。
これは私が日本との縁の始まりとも言えるでしょうか。
だが、この縁に対して僕には抵抗がありました。

私は日本語の成績が意外と優秀でした。
高校一年生のとき日本語能力試験の一級に合格し、2003年の10月に京都にやって来ました。
その後、私費留学生試験を受け、京都大学と名古屋大学の工学部に受かり、翌年の四月に京都大学工学部に入学しました。
ここから順風満帆な留学生活が始まるだろうと皆さんが思われるかもしれませんが、実は丁度この時期からあるとんでもない危機が僕に訪れました。

日本に留学に来たとはいえ、心底に日本に対しての抵抗が消えていなかったです。
日本に住みながらもずっと中国のことを思っていました。
学校の食堂で卵かけご飯と納豆を食べているときに、もし中国にいたらもっと美味しいものが食べられるなと思ったり、自転車で坂に登るときに、地元なら坂なんてないし楽だなと思ったりなど。
何でも中国のことを懐かしく思っていた僕がすごくホームシックになったのです。

そしていくら日本語を中国で勉強した履歴があるといっても日本に来てから僕には非常に大きな言葉の障壁が有りました。
日常生活で言葉が通じないことがたくさん起こりました。
ハンバーガを食べたい僕が店に入ってハンバーグ注文したら出てきたのはミンチの塊でした。
あれ?パンは別で来るの、と思い、その場でずっとパンの出場を待っていたのです。
、テレビの笑い番組でさんまさんがテーブルを叩いて必死に笑っている姿を見て私の表情が固まりこの人何をしゃべっているだろう、と。
今の話を聞かれた皆さんが笑っていらしゃるかもしれませんが、実は笑えなくて本当に困る話もあります。
もっとも苦しんだ言葉の問題は学校にあります。
クラスメートとなかなか交流できず友達も作れません。
それに講義の内容がわからないのは僕には一番の困惑でした。
なぜなら、僕が日本に留学に来たのです。
知識を身につけるために来たのです。
これすらできないなら自分が何のために日本に来たのだろうと思いました。
授業でみんなが先生の話しを聞き、納得しいるような表情を見て自分だけが別の世界のものだと感じていました。
.孤独と恐怖に囲まれた僕が戸惑ったのです。
一時学校に行くのも嫌になり、引きこもり状態までなってしまったのです。
僕にとって正に危機です。

このままでいいのか、何でこんなになったのかと自分に問いました。
そしてどうしてこんな状況に追い込まれたのかを深く反省したのです。
全て自分のせいではないかという結論を出しました。
自分が日本の社会に入ろうとしていなかったからではないか、と。
このとき頭に浮かんだのはあの一言でした。
“郷に入って郷に従う。
”ということわざでした。
日本に来た以上もう日本社会の一員になったということです。
日本を自分に合わせるのではなく自分を日本に合わせ、自分の心を日本に開けないといけないのだとやっと気がついたのです。
自分を変える、自分を身近の環境に合わせる、これは留学生活の一つの乗り越えなければならない壁です。

そして自分の心を日本に開けようと決めた日から卵かけご飯と納豆も美味しくなりました。
坂に登るときにもつらくなくなりました。
自分から積極的にクラスメートに声をかけ、言葉で通じないときが当然ありますが、ボーデイ言語を使ったり字を書いたりして冗談をいいながら学校で楽しい時間を過ごせました。
日本人の友達ができたおかげで日本語も上達するようになり、日本人と話すのもこわくなくなりました。
昔の自分を思い出したらしゃべらないとうまくならない、うまくないからしゃべりたくないという悪循環だったではないでしょうか。
今一番の趣味は過去には絶対にありえない漫才を見ることです。
。今は毎日学校に行くのは楽しみになり、アルバイト先で仲間と笑顔で支え合いながら働き、本当に幸せな毎日を送っています。
まるで曇った空が晴れたみたいな心境です。
そう!自分の心が曇っていました。
それは自分が心を閉じてしまい、外からの日差しが入れなくなったからです。
自分の心を日本に開いた後、周りの日本人の方からの愛情が暖かくて柔らかい日差しのように僕のそらを明るくしてくださったのです。

日本に来られた外国人の方々、僕と同じ困難に会っていませんか。
そういう時に日本に文句を言うではなく、自分が本当にこの社会に融合しようとしているのかを考えてください。
自分の心を日本に開き、そして必ず、必ず日本からの日差しが入ってくるのです。

以上です。
御清聴ありがとうございました。

元のページに戻る
[スピーチa]
[スピーチb]
[スピーチc]
[スピーチd]
[スピーチe]
[スピーチf]
[スピーチg]
[スピーチh]
[スピーチi]


目次  
トップに戻る
ビオトープ
少年ラグビー
弁論大会
YE帰国生
YE来日生
リンク
ライオンズとは
私達のクラブ
奉仕活動
メンバー紹介
例会日程
長谷川きよし
検眼奉仕
アンケート