2006年外国人による日本語弁論大会 発表原稿
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「ルームメイトが変えてくれた
私の中の日本」

ガ シン

中国

 秋が深まり、冬の訪れさえ感じます。
いつものように日本人の友達と一緒に大学の学食で昼間の面白かったことを話しながら、晩御飯を食べていました。
「また明日な」と穏やかな笑顔で手を振ってくれた友達を見て、この瞬間、私は国の違いを意識しませんでした。
日本で過ごす三度目の秋です。
この秋もいろいろと思い出しました。

 小学校から高校まで、私は中国で過ごしました。
中国のごく普通の学生のように、毎週の月曜日の朝、学校のグランドで国旗の掲揚式に参加し、校長先生の愛国教育講演を聞きました。
毎週同じ話ばかりすることに対して、すごく抵抗を感じていましたが、知らず知らずのうちに、日本という国に対して、恐ろしい印象を持つようになってしまいました。
同時に、電化製品にすごく興味を持ている私にとって、日本は電化製品の天国のような存在でもありました。
恐ろしく感じながら、いつか日本に言ってみたいという思いを抱きました。

 高校を卒業して中国の大学に合格したのですが
私は考えに考えて、最後には日本に留学することにしました。
そのころのことを思い出すと、かなり大きな賭けだったと感じます。

最初の一年半は、日本語学校に通い、ゼロから日本語を学びました。
その頃は相手が何を言っているか分からず、自分のいいたいことも言えず非常に辛かったです。
日本でくらしていたのですが、日本社会とは隔絶していたと言ってもいいでしょう。
日本社会に対する恐怖感はますます増えてきて、先入観が残ったままでした。

 日本に対する印象が初めて変わったのは大学に入学したときです。
大学の寮にすむことにしたのですが、初めての日本人の友達はルームメイトでした。彼は私と同じように新入生で、初めて会った日は夜遅くまでずっと話をしていました。
当時の私の日本語はまだ拙かったのですが、自分の少年時代のことから、昔話、日中戦争、日中関係に関して、深くまで話をしました。
私たちは少年時代の生活に多くの共通点を発見し、すごく親近感をもつようになりました。

 彼の話を聞いて、私はうれしく感じながら、すごく引け目も感じました。
彼は中国のことに非常に詳しかったのですが、一方当時の私は、日本社会とのかかわりをあまり持っていなかったので、日本に関しての知識がかなり欠けていると感じました。
例えば、私は江戸時代さえ聞いたこともありませんでしたが、彼は中国の昔の王朝時代に非常に詳しくて、皇帝の名前まで言えることに私は非常に驚きました。
私のように、普通の中国人でさえ、覚えていない自分の国の歴史を、目の前のごく普通の日本人は正確に記憶していたのです。
私は非常に恥ずかしい思いがしました。
日中戦争の話をしたときには、中国のメディアで報道されたこととはまったく違って、彼の学んだ歴史は私が学校で学んだ歴史と少しも違いは無いとわかりました。
彼の話を聞き、今まで中国のメディアの報道に疑問を持ち、更に現在の中国に関して知っていることを聞きました。
そのときの彼は、中国の一般的な若者と対照的に、偏見なく両国について話してくれました。

彼と出会って以来、日本社会に対するイメージは大きく変わりました。
彼とは現在でも仲良く同じ部屋くらしているのですが、彼以外にも積極的に日本の友達を作って、いろいろ話し合うようになりました。
私は日本人、そして日本という国を次第に好きになりました。彼らと一緒ににいるときはいつも楽しく、彼らから思いやりを感じます。
自分が外国人であることを忘れてしまうこともあります。

 大学に入学してからいろいろ考えましたが、日本に留学するという選択は非常に正しいかったと思います。
なぜかというと、今回の留学のおかげで、私は本当の日本の姿を見ることができて、偏見を持たずに物事を見ることが出来るようになったからです。
中国の反日教育(注*1に関しては皆さんもご存知でしょうが、日本人は戦争を起こす民族だというイメージを、多くの中国人が持っています。
けれども私は、日本人は誰よりも平和を大切にしている民族であると思います。
これは日本人の習慣や、行動からはっきりと伝わってきます。
たとえば、常に相手の感情を考えながら、相手を傷つけないよう行動するというように。これは、自分の周囲そして社会の安定を大切にしたいからだと思います。
日本は先進国になって以来、中国を含む多くの発展途上国にODA(注*2を通じて援助をしてきました。
中国では、80年代から90年代の間に建設された鉄道や通信施設のほとんどは日本の支援のおかげでした。
そして、日本は国際社会の安定だけでなく、省エネルギー技術の開発に見られるように地球環境の保護にも力を入れています。
こうした日本のすばらしい点は、インターネット(注*3がこのように発達しているにもかかわらず、現在でも多くの中国人には知られていないいのです。
中国の友達に、「日本の中国に対するODAについてしていますか?」と聞いたら、「はい」と答えてくれた友達はいませんでした。悲しい現実だと思います。
中国の若者は日中戦争の日本しか知りません。戦後に生まれ変わった、平和で思いやりが溢れている日本のことは、残念ながらほとんど知らないのです。

 私はこうした貴重な経験を持っていることに対し、誇りを感じながら、自ら何らかの行動にでる必要があると感じています。
一人ひとりの出来ることはかぎられているかもしれませんが、私を含む留学生は、本当の日本を一人でも多くの中国人に伝える責任を持っているのではないでしょうか。
そこでわたしは日本のことを中国に紹介するサイトを作る計画を立てています。
日本の歴史や観光地といったことよりも、日本社会や文化、環境意識の実情、そして私が日本で体験したことなどを中国語に翻訳し、サイトに乗せて、多くの中国人に見てもらうつもりです。
中国のメディアを通じては、人々に正しい日本の情報が入らないため、自分のメディアを通じて、本当の日本を中国に中継するつもりです。

 多くの中国人が、真実を知ることにより、きっと日本に対する見方が変わると思います。
日本と中国がお互いに理解しあう日がいつか来ると、信じています



編集者注記
注*1 反日教育:天安門事件に象徴される中国政府の思想弾圧、言論統制に対する国民の不平、また市場経済の急激な導入による貧富の差による不平等感、それらの不平不満の対象である「政府共産党」から目をそらさせ国民の共産党への求心力を維持するために国家的プロジェクトとして行われている反日キャンペーン。侵略国家日本との戦争の英雄的勝利を賞賛し、現在の「日本の指導者、教育の歴史的認識が誤り」として攻撃している。
江沢民前国家主席がはじめ現在も継承拡大されており、「抗日戦争記念館」と呼ばれる反日のための博物館が多く建設されている。
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注*2 ODA:政府開発援助 中国への2004年までの実績
有償資金協力(契約時約款ベース)約3兆1331億円
無償資金協力(契約時約款ベース)約1472億円
技術協力実績(JICAベース)約1505億円
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注*3 中国のインターネット:中国当局による完全な検閲があり、中国内部で閉鎖されたインターネット。外国からの情報はほとんどはいらない。中国国内の情報も厳しくチッェクされる。反政府、政府批判は許されない。 本文に
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